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韓国の最新知財情報 - 2026年8月

Published on
2026.08.20
韓国の審査猶予及び優先審査制度の最近の変化

2026年には、韓国の特許審査実務において、審査猶予の変更・取下げに適用されていた2ヶ月の期限が廃止され、フィジカル人工知能及び合成生物学等の先端技術分野の優先審査対象が拡大された。また、優先審査事件の後続処理期間も短縮された。以下では、このような変化の主な内容と海外出願人の観点から見た実務上の留意事項をまとめる。

1. 審査猶予の変更・取下げ期限制限の廃止
    韓国の審査猶予制度は、出願審査請求日から9ヶ月以内に猶予希望時期を指定して申請することにより、審査請求日より24ヶ月が経過した後から出願日より最長5年の範囲内で審査開始の時期を定めることができる制度である。

    従来は、審査猶予の希望時期を変更するか、または審査猶予申請を取り下げるためには、審査猶予の申請日から2ヶ月以内に取下書または補正書を提出しなければならなかった。そのため、審査猶予の申請後に市場状況や製品発売の日程が変更されたとしても、出願人が審査時期を調整することが困難であるという実務上の制約があった。

    改正された「特許法施行規則」第40条の3第2項及び「実用新案法施行規則」第10条の3第2項は、上記2ヶ月という期限を削除した(2026年5月14日施行)。これにより、審査官が審査に着手するまでは、従来の2ヶ月の制限なく、猶予希望時期を早めたり遅らせたりすることができ、審査猶予の申請自体を取り下げることもできる。

    今般の改正により、企業及び出願人は、資金調達、研究開発(R&D)の進行速度、製品の発売日程及び市場競争状況等、事業戦略の変化に合わせて、特許審査及び権利化の時期をより柔軟に管理することができるようになった。

2.先端技術優先審査の拡大及び処理期間の短縮
    ■ フィジカル人工知能・バイオ分野の優先審査の拡大
        現在、先端技術優先審査は、半導体、ディスプレイ、二次電池、バイオ、先端ロボット及び人工知能(AI)の6つの分野を対象として運営されている。
2025年にバイオ、人工知能(AI)及び先端ロボット分野が先端技術優先審査の対象として追加されたのに引き続き、2026年には、人工知能分野における適用範囲が従来の人工知能ニューラルネットワーク関連技術からフィジカル人工知能まで拡大され、バイオ分野では合成生物学等を含むように対象範囲が再整備された。関連対象と適用期間は、2026年1月30日付のバイオ(生命工学)及び人工知能優先審査対象指定公告により変更・延長された。

    ■ 最初の審査及び後続審査の処理期間の短縮
        韓国の知的財産処が公開した2025年の実績によれば、最初の審査結果までの平均待機期間は一般審査が14.7ヶ月、優先審査が2.1ヶ月であった。韓国の知的財産処は、2026年内に全体の平均審査待機期間を14ヶ月に短縮する計画であり、特に、優先審査事件では、出願人が意見書・補正書等の中間書類を提出した後の審査官の内部処理期限を4ヶ月から2ヶ月に短縮することで、審査終結までの期間も短縮する方針である。

    ■ 海外出願人の留意事項
        先端技術優先審査は、当該技術分野に属するとの主張のみで利用できる制度ではなく、①指定公告で定められた特許分類(CPC)が当該出願の主分類として付与されていること、②韓国国内において関連製品を生産し、または生産準備している等の一定の要件を満たしていることが必要である。したがって、海外出願人は、個別出願について先端技術優先審査の適用要件を満たしているかを確認し、これを満たさない場合には、特許審査ハイウェイ(PPH)制度等の他の優先審査制度の活用可能性を検討する必要がある。

3. 審査猶予と優先審査の戦略的連携
    2026年の審査猶予制度の改正と先端技術優先審査の拡大及び後続処理期間の短縮を共に活用すると、出願人は、事業の段階に応じて特許審査の速度と権利化の時期をより弾力的に管理することができる。

    商用化に長期間を要する技術の場合、初期段階では審査猶予を申請して技術開発及び市場動向を観察しながら請求の範囲の戦略を検討することができる。その後、投資の誘致、製品発売、技術移転または海外進出等の迅速な権利確保が必要となる事業上のイベントが生じた場合には、審査官が審査に着手する前に審査猶予を取り下げ、当該出願が優先審査の要件を満たす場合、優先審査を別途申請する戦略を考慮することができる。

    これにより、企業は、初期段階において審査対応費用の発生時期を調整する一方、事業上必要な時期においては、最初の審査結果と出願人の対応後における後続審査の結果を早期に確保することができる。ただし、優先審査は審査手続きを前倒しする制度に過ぎず、特許査定または特許登録を保証するものではないという点に留意する必要がある。

Author チェ・ヒョンウォン, キム・サンヒョン


2026年改正の商標審査実務:より迅速かつ公正になった商標審査制度

韓国知的財産処は、商標審査の迅速性と公正性を高めるために、関連規定と審査実務を順次改正・施行している。

主な改正事項は、①拒絶案件における審査保留の解消時期の明確化、②拒絶査定予告通知手続きの簡素化、③取消差戻し事件における審査官の変更、④商品分類及び類似商品の審査基準の整備であり、改正事項の詳細は、以下のとおりである。

1. 先願による拒絶案件における審査保留解消時期の明確化
    現行の商標審査の実務上、出願商標と同一または類似する先願商標が存在する場合には、先願商標の処理結果が確定するまで後願商標の審査が保留されることがある。しかし、従来は、審査保留の事由が解消される時期が明確ではなかったため、後願商標の審査が長期間遅延することがあった。

    2026年7月1日より施行された改正「商標審査事務取扱規程」等によれば、先願商標の関連指定商品に対する拒絶査定が確定し、後願商標の指定商品と同一・類似でなくなった場合には、その拒絶査定確定日に審査保留の事由が解消されたものと判断される。

    これにより、先願商標により保留されていた後願商標の審査がより迅速に再開されるものと予想される。

2. 拒絶査定予告通知手続きの簡素化
    従来は、商品類の区分や指定商品の記載等に関する商標法第38条第1項に基づく拒絶理由が通知された後、出願人が意見書や補正書を提出しなかった場合でも、拒絶査定に先立ち、改めて拒絶査定予告通知書が送付されていた。

    2026年7月1日からは、出願人が最初の拒絶理由通知に対して何ら対応をしなかった場合、改めて同一事項を案内する拒絶査定予告通知手続きが省略される。

    したがって、出願人が最初の拒絶理由通知に対応しないと、追加の通知を受けることなく拒絶査定が下される可能性があるため、追加の通知を前提に対応を先送りすることなく、最初の拒絶理由通知の段階において必要な意見書または補正書を適時に提出しなければならない。

3. 取消差戻し事件は新たな審査官が担当
    特許審判院が商標登録の拒絶査定を取り消し、事件を知的財産処に差し戻した場合、従来は、当該拒絶査定に関与した審査官が再度出願を審査することができた。

    2026年7月1日から施行された改正規定では、原決定に関与した者を後続手続きから排除する、いわゆる「前審関与制限」の趣旨を審査段階にも反映した。これにより、従来の拒絶査定に関与した審査官は、取消差戻し後の再審査から除外され、新たな審査官が当該事件を担当することになる。

    今般の改正により、取消差戻し事件に対する審査の客観性と手続的公正性が一層強化されることが期待される。

4. 商品分類及び類似商品の審査基準の整備
    2026年1月より、実際の取引実情を反映し、人用医薬品と動物用医薬品、人用医療機器と動物用医療機器との間の類否に関する判断基準が見直された。

    また、2026年1月1日より改正されたニース国際商品分類が施行されている。主な変更事例としては、眼鏡・レンズ・サングラスの分類が第9類から第10類に変更された点と、精油のうち製造用精油が第1類、食品用エッセンスが第30類に分類される点等が挙げられる。

    そのため、商品分類が変更された分野では、実際の事業内容と今後の使用計画を考慮し、適切な商品類と指定商品を選定しなければならない。

5. 実務上の留意点
    今般の改正は、不要な手続きと審査の遅延を削減すると共に、取消差戻し事件における審査の公正性を強化する方向に行われた。

    特に、最初の拒絶理由通知に対応しない場合には、追加の予告通知を受けることなく拒絶査定が下される可能性があるため、出願人は、意見書及び補正書の提出期限をこれまで以上に徹底して管理しなければならない。また、出願に先立ち、改正された商品分類と類似商品の審査基準を確認し、指定商品の漏れや誤分類を防止することが重要である

Author イ・ミジョン


海外からもオンラインで参加可能な韓国特許審判院の口述審理

    韓国特許審判院(IPTAB)は、2026年7月から韓国政府の「オンナラ個人用コンピュータ(PC)映像会議システム」を活用し、インターネット映像口述審理を本格的に実施する。

    特許審判の当事者及び代理人は、特許審判院(大田)や知的財産処ソウル事務所に直接出席することなく、事務所や自宅等の希望する場所からインターネットを介して口述審理に参加することができるようになった。特に、海外に居住する当事者も、韓国を訪問することなく口述審理に出席して意見を陳述することができるという点から、海外顧客の審判手続きへの参加が大幅に拡大するものと期待される。

    従前は、口述審理に出席するためには、大田に位置する特許審判院に直接出席するか、知的財産処ソウル事務所にて大田とソウルを結ぶ遠隔映像審理に参加しなければならなかった。

    今回導入されるインターネット映像口述審理は、特許審判院またはソウル事務所を訪問する必要がなく、当事者がどこからでもインターネットによる映像会議システムに接続して参加することができる。韓国政府が運営する「オンナラ個人用コンピュータ(PC)映像会議システム」のホームページ1)に参加者名と特許審判院から共有された接続コードを入力するだけで、多数が同時に映像会議システムに接続できるだけでなく、代理人は審判院に直接口述審理に参加し、顧客は海外または国内から映像口述審理に参加するというハイブリッド方式も可能である。これにより、海外顧客は、海外からの移動時間や出張費用を削減しながら、審判手続きに効率的に参加することができる。

    したがって、インターネット映像口述審理は、韓国の代理人と海外当事者が場所の制約なく口述審理に共に参加し、審判部に対して当事者の意見を直接説明することができるため、海外顧客に広く活用されるものと期待される。


1) オンナラPC映像会議 (https://vc.on-nara.go.kr:8089/guest/)

Author クァク・ジュンヨン , パク・ジェヨン


細胞・遺伝子治療薬の「臨床的有意性」の判断基準に関する最近の裁判例

    最近、ソウル行政法院が幹細胞治療薬の品目許可申請に対する返戻処分を取り消し、先端バイオ医薬品の安全性・有効性審査の中核的な基準である「臨床的有意性」の意義と判断基準を明確に提示する判決(2025グハプ55403;2026年7月9日宣告)を下した。

    Lee&Ko法律事務所が代理した株式会社RNL再生医学研究所(以下、「原告」)は、重度の変形性膝関節症を適応症とする自家脂肪由来間葉系幹細胞治療薬「ジョイントステム」(「先端再生バイオ法」上の細胞治療薬)に関して、2回にわたり品目許可を申請したが、食品医薬品安全処は、「第3相臨床試験の結果、統計的有意性は認められるものの、既に市販されている関節炎治療薬と比較して治療効果の優越性が認められない」とする中央薬事審議委員会の審議結果に基づき、「臨床的有意性を認める資料が不足している」との理由で返戻処分を行った。

    これに関連して、韓国の食品医薬品安全処の告示である「先端バイオ医薬品の品目許可・審査規定」第19条第4号は、先端バイオ医薬品の安全性・有効性審査のうち、臨床試験資料の審査基準に関して、以下のとおり規定している。
  
4.評価:提出された臨床試験成績に関する資料の検討の結果、当該適応症等について臨床的有意性が認められる場合、これを認める。治療的確証臨床試験の場合は、特別に認められる場合を除き、事前に設定された統計解析計画に従って有意性を立証しなければならない。

    判決において、ソウル行政法院は、①事前に承認された臨床試験計画に従って統計的有意性が立証された以上、臨床的有意性を認めなければならず、②薬事法上、品目許可の要件は「安全性・有効性」のみであり、既存の治療薬に対する「優越性」まで要求することは違法であると判断した。

    今回の判決は、これまで審査実務において裁量的に運用されてきた「臨床的有意性」の判断に関して、第3相臨床試験において事前設定された統計解析計画に従って統計的有意性が立証されれば、原則として臨床的有意性及び安全性・有効性を認めなければならないという明確な基準を提示したという点において大きな意義がある。

    特に、細胞治療薬および遺伝子治療薬等の先端バイオ医薬品分野は、既存治療薬との直接比較が困難である場合や、小規模な臨床試験により開発される場合が多く「既存治療薬に対する優越性」を要求するか否かが、品目許可における障害となってきた。今回の判決は、このような優越性の要求が薬事法上の根拠のない違法な基準であることを明確にすることにより、品目許可審査における法的予測可能性を高める契機となった。

    本判決の詳細につきましては、 Lee&Ko法律事務所のヘルスケアグループのニュースレターをご参照ください。

Author ク・ジャヨン, イ・ヨンジュ
 
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